コンセプトはあるのか

真似するだけではダメ

 おもちゃ屋に子供を連れて行った母親が「自分で欲しいものを選びなさい」と言うと、子供が「僕には見えないんだもの」と言うのを聞いた店主は、大人の目線で陳列していたことに気付いて子供の目線で陳列し直した結果、売り上げが五倍になった。
駅前のおもちゃ屋の店主がこれを聞いて真似たところ、案に相違して売上が落ちた。
その駅前のおもちゃ屋では、子供連れの客はほとんどなく、勤め帰りの父親や知人を訪問する人が土産に買っていたからである。
 ただ、表面的に真似をするだけでは何事も成功しない。自分の店の客層をはっきりと把握し、コンセプトがしっかりしていないと、こんな結果になる。
 常識とかノウハウというのは、ある時代の、ある局面における成功例でしかないのに、ついそれを忘れてしまい、あらゆる時代の、どんな局面でも通用するものと錯覚してしまうから変になる。
水に溺れている人を助けるには自らも水に飛び込まなければならないように、私たちに大切なのは、対象とするお客様の懐に飛び込んで同じ立場に立つことである。

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電話にも目がついている

 ある小さな会社に、同じ人からの間違い電話が三度続けてかかってきた。三度目にかかってきた時、「同じ方から三回もお電話を戴くのも何かの縁でございます。私どもは交換手もいない小さなダンボール会社ですが、もしダンボールの御用がございましたら、いまおかけの電話番号へぜひ」と応答した。
ところが何年か経って、本当にその会社から百万円単位の大量注文がきた。いまではその会社も成長して何千万円のお得意様だ。
 得意先の山田さんからいつも細かいことまで煩いほど電話がかかってくるので、社内で山田をもじって「うるさいじゃまだ」とあだ名をつけていた。ある時新入社員が電話をとり「課長、うるさいじゃまだからです」と取り次いだのが相手に聞こえてしまい、「うるさく邪魔して悪かったな」とがちゃんと電話を切られ、取引を打ち切られた。
 電話応対コンクールで審査員がそろって高い点数をつけて優勝したOLは、審査員には声しか分からないが、「ありがとうございます」と言った時は、本当にお辞儀をしたように聞こえた。後から会場の担当者に聞いてみると、目の前に人がいるように電話口で話し、本当に頭を下げていたという。
見えない電話にも目がある、という話。

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顔の見えるサービス

 家電量販店の快進撃が続くなかで、価格競争力のない個人経営の販売店は苦戦が続いているが、横須賀にある『パナステージしんこう』は住宅地の45平方メートルの店で一億5000万円近くを売上、松下から12年連続表彰を受けている。
 電球交換や家電修理など、どんな細かなことでも客から依頼を受ければ、すぐに駆けつけて顔つなぎをする。家電製品は毎日使うものが多く、すぐに修理して欲しいという要望が強い。それだけに迅速に対応すれば感激してもらえる。大手は、製品を預かって修理工場などに出すので対応速度が遅い。そこで差をつけることができる。
 チラシもただ郵便受けに放り込むだけでなく、必ず一軒ずつ顧客の家を訪ねて直接手渡す。これで、月に一度は話をする機会を持つことができる。「うちは○○電気に勤めているから、こなくてもいい」と言った客でも続けていると、定年後、客になってくれる。
さらに、商品を買った顧客のデータはパソコンに登録して管理している。消耗品などを買いに来たときに、機種をうろ覚えでもパソコンで呼び出せるので間違うことがない。大手のできないきめ細かなサービスを徹底すれば生き残ることはできる。

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